2010年9月13日月曜日

第1417回

第 1417 回のお題 (出題:シリョウ)
視聴率1%を割ってしまったサスペンスの展開

[1位]ジャスティス智彦

新宿の路上で90年代のコミックスを中古販売しているユキヒデのもとに、三十路前後と思しきサラリーマン風の男がやってきて「弟をダメージ・ジーンズのように加工してほしい」と摩訶不思議な依頼をする。

「ジーパンの加工は夢の中でしかやったことがないし、人間とジーパンは勝手が違うのではないか」と遠回しに拒絶をするユキヒデに対し、サラリーマン風の男は「あなたが素人でも構わないし、弟のことはジーパンだと思ってくれていい」と爽やかに言うと、10万円をピン札で手渡した。

突然の大金に目が眩んだユキヒデが男に言われるがまま住所と電話番号を教えると、男はビニールシートに並んだ漫画本の中から『花さか天使テンテンくん』全17巻セットを抜き取ってから、高層ビルの谷間へと歩き去っていった。

後日、ユキヒデの自宅に13~14歳程度のお世辞にもオシャレとは言えない男児が「チワーッス」という体育会系のノリで訪れてきたので、「ウチューッス」などと無理に相手に合わせつつ、infoseekで適当に検索をして出てきた加工法(紙やすりでこする、ペンキを散らす等)を次々と試していくと、男児は見違えるように格好良くなっていった。

「自分には元からダメージ加工の才能があり、とうとうその種から芽が出たのだ」と確信をしたユキヒデは、調子に乗って「Everything is washable」という謎の言葉を叫びながら全自動洗濯機に男児を突っ込み仕上げを始めるが、男児は間もなく水死してしまう。

逮捕されては人生が終わると判断したユキヒデは男児の遺体を押し入れに隠し何事もなかったかのように普段通りの生活を再開するが、ある日路上販売から帰宅すると「弟のダメージ加工はまだ終わりませんか?」というメッセージが留守番電話に残っていた。

もう隠し切れないと観念したユキヒデはサラリーマン風の男に電話をかけ自宅に来てもらいすっかり状態が変わった男児の遺体を見せるが、男は別段驚きもせずむしろ満足げな顔になり「クールなジーンズが完成しましたね」と微笑む。

ユキヒデが混乱して何も言えずにいると、男は履いていたスラックスをおもむろに脱ぎ始め、ダルダルになった男児の遺体の口を大きく広げて順々に足を突っ込み、さながらジーンズを履くように装着すると、「嗚呼、ピッタリです。あなたは実に良い仕事をしてくれました」と言い、追加報酬の10万円を置いて立ち去っていった。

新宿では昔から、『少年ジャンプ』『少年マガジン』などと荒々しく書かれた看板を設置し、雑誌や漫画本を路上販売する光景が見られるが、最近その中に、『少年ジーンズ』という一風変わった看板を掲げる店が出ていることがある。

もし、あなたが奇抜なデザインのジーンズを欲しがっているのなら、ユキヒデと名乗る店主が営業するその店を訪れてみると良いかもしれない。

56.26 pts [86.75](100.00%) Rate:49.85Up!

現在のレート:1595.32(当面の目標としていた1600に急接近)


久しぶりの1位(第1339回以来)だ。通算4回目。
結果を見て少し震えた。素直にとても喜ばしい。
レートも一気に上がったし。

僕はたまに長文を書く。
昔から、というわけではなく、ここ最近(数ヵ月程度)の傾向だ。

お題を見て、初めから「今回は長文だな」と決めるわけではない。
幾つかの短文ネタをメモ帳(PC上)にサクサク書いているときに、
ふと「これを膨らませてみたいな」という欲求が湧く。

長文ネタは、実際のところ、作成にものすごく時間がかかる。
やはり、気をつけなければならないことが多いからだ。
��例えば以下のようなこと)

・全体の流れ(導入、伏線、小ネタ、オチ)
・文章としての読み易さ(言葉遣い、句読点位置、改行位置)

書いては削り、書いては直しの繰り返しで、
自家製のパンが焼けるくらい時間がかかる場合もある。
��これまで一番時間がかかったのは、第1358回のネタ。60位)

そんなわけだから、採点が済み、結果が出て、
書いた長文が良い評価を受けていると、すごく嬉しい。
短文や中文では味わえない快感が、そこにはある。
ましてや1位なんぞ取ろうものなら、絶頂だ。

※因みに感覚的・個人的な「短文/中文/長文」の定義は以下の通り

・短文:1~2行
・中文:3~9行
・長文:10行以上

しかしながら、今回は快感以上に、驚きが大きかった。
「冗談だろ?」という気持ちすらある。
どう考えても「頭がおかしいネタ」だからだ。

��そういう採点者コメントもいただいていた)

作成過程も、「じっくり」という感じではなく、
湧き上がってくるものをひたすらタイピングするようだった。
完成したネタからは、僕の粗暴な面が滲み出ている。

「面白さ」という点では、上位に相応しくはないだろう。
ただ、全体的に「怪しさ」や「ワケの分からなさ」は演出できたはずだ。

採点者の皆様との相性もあるが、
このようなネタで1位を取れたことは、
新しい発見と言える。


以上。

※ネタの内容には触れない
※他の人のネタへのコメントもお休み

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